入社したら持株会の案内が来た。周りも入るらしい。断っていいのかどうかも分からない——この記事は、そこで迷っている方に向けたものです。結論から言うと、私は入る必要はないと考えています。ただし理由は「損だから」ではありません。先にやることがあるからです。実際に持株会へ加入し、のちに退会して全株を売却した経験から、判断の順番をお伝えします。

会社から持株会の案内が来たんだけど、同期もみんな入るみたい。入らないと変かな?

変じゃないよ。加入は任意だし、あとから入れることも多い。それにね、入るかどうかを考える前に、先に済ませておくことがあるんだ。
結論|新入社員でもベテランでも、入る必要はありません
先に結論をお伝えします。私は、資産形成を目的とした持株会への加入は必要ないと考えています。入社したばかりの方も、勤続20年の方も、そこは変わりません。
ただ、これは「持株会が損だから」という話ではありません。やる順番の問題です。入るかどうかを考える前に、確認しておくことが3つあります。
表1 持株会を考える前に確認する3つ
| 確認すること | 満たしていないなら | |
|---|---|---|
| ① | 生活防衛資金があるか | 現金を貯めるのが先 |
| ② | 新NISAの枠を使っているか | そちらが先 |
| ③ | 資産に占める自社株の比率を決めているか | 決めてから |
入社したばかりの方は、たいてい①でつまずきます。そして3つとも満たしている方は、たいていの場合、持株会を必要としていません。すでに自分で資産配分を組み立てられているからです。

なぜ入社時に勧められるのか
持株会は、ほとんどの上場企業にあります。東京証券取引所の調査では、持株会がある会社の96.6%が奨励金を支給していました。給与天引きで積み立てると、会社が上乗せしてくれる仕組みです。
制度そのものは、従業員の資産形成を支援する福利厚生として用意されています。会社側から見れば、株主構成が安定するという利点もあります。
つまり勧める側に悪意はありません。ただ、制度を案内する人は、あなたの資産全体がどうなっているかまでは考えていない——それだけのことです。奨励金の相場は持株会の奨励金は何%が相場?にまとめました。
理由①|投資より先に、生活防衛資金
入社1年目は、とにかく現金が出ていきます。引越し、家電、スーツ、冠婚葬祭。まとまった出費が、予告なく続く時期です。
そこで持株会に月1万円を回すと、その1万円はすぐには戻ってきません。
持株会の株は、単元 (通常100株) に達するまで引き出せないのが一般的です。積み立てた金額がそのまま引き出せるわけではありません。
さらに、引き出す段になっても自由が利きません。引き出し先の証券口座は、持株会の事務委託先である証券会社 (野村證券・大和証券・SMBC日興証券・みずほ証券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券など) に指定されていることが多いためです。ネット証券へ直接移すことは、原則できません。
お金が必要になったときに使いたいお金であるにも関わらず、すぐ動かせない場所へ入れる。社会人1年目にこれをやると、いざというときにカードローンを使うことにもなりかねません。順番が逆です。
理由②|「強制的に貯まる」は、NISAでもできます
持株会を勧めるとき、いちばんよく使われる論拠がこれです。「給与天引きだから、自然と貯まるよ」。
これは本当です。手元に来る前に引かれるので、意志の力に頼らずに積み立てられます。貯まらない人ほど効きます。
ただ、それは持株会でなくてもできます。証券口座の自動積立を設定すれば、毎月決まった日に、決まった額が引き落とされます。仕組みとしては同じです。
表2 同じ「自動で積み立てる」でも、中身が違う
| 持株会 | 新NISAの自動積立 | |
|---|---|---|
| 買うもの | 自社株 1社 | 世界中の株に分散 |
| 上乗せ | 奨励金がある | なし |
| 税金 | 配当・売却益に課税 | 非課税 |
| 引き出し | 単元に達するまで不可 | いつでも売れる |
| 会社を辞めたら | 退会になる | そのまま続く |
奨励金という上乗せがある点だけは、持株会が勝ちます。それ以外は、すべてNISAのほうが自由です。設定の手順は【楽天証券】新NISA積立投資の始め方に画面つきで書きました。
特に5つ目が重要です。持株会は、会社を辞めた時点で終わります。20代・30代は転職の可能性がいちばん高い時期です。数年で退会することになれば、手続きの手間だけが残ります。会社を辞めるときに何が起きるかは持株会は退職・転職するとどうなる?にまとめました。
理由③|若い人ほど、勤め先への依存度が高い
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
「若いうちはリスクを取れる」とよく言われます。運用期間が長いので、値下がりしても回復を待てるからです。この考え方自体は正しいと思います。
ただ、分散の話に持ち込むと、逆になります。
新入社員は、金融資産がほぼゼロです。持っているのはこれから働いて稼ぐ力——人的資本だけ。そしてその人的資本は、いま勤めている1社に100%預けられています。
つまり入社したての人は、すでに1社への集中投資が最大の状態にあります。そこへ自社株を足せば、給与も資産も同じ会社。会社が傾いたら、収入と資産が同時に減ります。

50代になれば、金融資産が積み上がっている分、勤め先への依存度は相対的に下がります。それでも私は持株会をゼロにしました。依存度が下がったからといって、わざわざ同じ会社に寄せ直す理由がないからです。
それでも入るなら|何%までか
「勤め先を応援したい」「株主総会に出てみたい」——資産形成以外の理由で持ちたい方もいると思います。それは否定しません。
その場合の目安は、日本株全体のなかで多くても2〜3%、できれば1%までだと考えています。
理由は単純です。私はいま日本の高配当株を約90銘柄持っていて、均等に持っていると仮定すると1銘柄あたり約1%になります。つまり「自社株を3%持つ」というのは、33銘柄への投資と同じ集中度だということです。
表3 1銘柄あたりの比率と、分散する銘柄数
| 1銘柄あたり | その比率で分散すると |
|---|---|
| 1%ずつ | 100銘柄 |
| 2%ずつ | 50銘柄 |
| 3%ずつ | 33銘柄 |

私はどうしたか|入って、辞めました
私は会社員として持株会に加入していました。奨励金は10%。上場企業でいちばん多い水準です。
それでも退会し、全株を売却しました。率に不満があったからではありません。
気づいたのは、すでに人的資本を投じている勤め先に、金融資本まで重ねて投じているということでした。理由③でお伝えしたことに、自分で気づくまで時間がかかったということです。
売却した資金は、業種を分散した高配当株とインデックス投資へ組み替えました。手続きの流れは持株会のやめ方にまとめています。
断りづらいときは
ここまでは制度の話でした。実際に迷う理由は、たいてい別のところにあります。「周りが入っているから」「勧めてくれた先輩に悪いから」です。
3つだけ、お伝えしておきます。
- 加入は任意です。従業員持株会は任意加入の制度で、会社が加入を強制することはできません
- あとからでも入れることが多いです。募集の時期は会社によりますが、入社時が最後の機会ではありません
- 急いで決める必要はありません。迷っているなら、まず生活防衛資金を貯めるほうが先です
「入らない」ではなく「いまは入らない」と考えれば、断りやすくなると思います。実際、順番として正しいのはそちらです。

断ってもいいんだ。ちょっと安心した。

うん。それにいま入らないほうが、あとで自由に決められるんだ。まず現金を貯めて、NISAを始めて、それでも余るなら考えればいい。その頃には、自分で判断できるようになっているよ。
まとめ|入らなくていい。大切なのは「順番」
- 新入社員でもベテランでも、持株会に入る必要はありません。損だからではなく、先にやることがあるからです
- 入社1年目は現金が出ていく時期。持株会は単元に達するまで引き出せず、引き出し先も指定されていることが多い
- 「給与天引きで貯まる」はNISAの自動積立でも同じ。しかも1社に偏らず、いつでも売れて、辞めても続きます
- 若い人ほど勤め先への依存度が高い。金融資産がない時期は、人的資本だけで1社に100%集中しています
- 加入は任意です。「いまは入らない」でかまいません
私は入って、辞めました。遠回りをした分、順番の大切さは実感しています。すでに入っていて、やめて新NISAへ移したい方は持株会をやめて新NISAへ移すにはをご覧ください。新NISAとの比較を数字で見たい方は持株会と新NISA、どっちを優先?をご覧ください。
よくある質問
Q1. 持株会の落とし穴は何ですか?
大きく3つあります。①単元に達するまで引き出せない ②引き出し先の証券会社が指定されていることが多い ③会社を辞めると退会になる。どれも「入るとき」には説明されにくく、やめる段になって気づきます。
Q2. 持株会はやったほうが良いですか?
資産形成が目的なら、私は必要ないと考えています。奨励金は買うときに一度だけ乗る上乗せで、そのために1社へ集中する対価としては見合わない、というのが私の判断です。
Q3. 途中でやめられますか?
やめられます。ただし手続きに2週間〜1か月かかり、単元未満の株は現金で精算されるのが一般的です。持株会のやめ方で手順を解説しています。
Q4. 持株会とNISA、どちらが得ですか?
私はNISAを優先します。20年で比べた数字は持株会と新NISA、どっちを優先?で計算しました。
Q5. 奨励金が高い会社なら、入る価値はありますか?
率が高いほど、1社への集中も速く進みます。判断は率ではなく、資産全体で自社株が何%になるかで決めるのが良いと私は考えます。相場は持株会の奨励金は何%が相場?をご覧ください。
Q6. もう入っています。やめるべきですか?
すぐやめる必要はありません。まず資産全体に占める自社株の比率を数えてみてください。判断の材料は持株会の株はいつ売る?にまとめています。
※ 本記事は筆者個人の実体験と考え方をまとめたものであり、特定の投資手法を推奨するものではありません。持株会の規約 (単元未満株の扱い・引き出し先・募集時期など) は会社によって異なります。ご自身の条件は勤務先の持株会事務局でご確認ください。奨励金の数値は東京証券取引所「2024年度従業員持株会状況調査結果の概要について」 (2026年2月16日公表) に基づく2026年8月時点の情報です。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。



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