PR

節約は年31万円で天井に来た|投資の入金力を収入側で上げた話

50代の資産形成

保険を解約して、新聞をやめて、通信費も見直した。もう削るところがありません。それなのに、投資に回せる額は思ったほど増えていない——この記事は、そこで止まっている方に向けたものです。結論から言うと、削る側には天井があります。筆者は固定費を年31万円削り、そこで頭打ちになりました。この記事では、その後何をしたかを、公的統計と自分の経験でお伝えします。筆者は52歳、就職氷河期に社会人になり、転職を3回しています。

みらい
みらい

固定費、けっこう削ったんだけど、投資に回せる額があんまり変わらないの。もう限界かな。

たく
たく

それは限界じゃなくて、次の段階に来た合図だよ。削る側には天井があるからね。ここからは入ってくる側を動かす番。

結論|節約には天井があり、収入には天井がない

投資に回せる額のことを、投資の世界では入金力と呼びます。式にすると単純です。

入金力 = 手取り − 支出

右の「支出」を減らすか、左の「手取り」を増やすか。やることはこの2つしかありません。ただしこの2つは、効き方がまったく違います。

支出を減らす側には、はっきりした上限があります。今の支出額より多くは削れません。ゼロより下には行けないからです。一方、手取りを増やす側に上限はありません。そのかわり、時間がかかり、確実でもありません。

だから順番があります。先に削り、その後で稼ぐ側を動かします。逆にすると、収入が増えてもそのまま漏れていきます。「もう削るところがない」という状態は、順番どおりに進んだ結果です。

支出を減らす側には天井があり、手取りを増やす側には天井がない
図1:削る側の上限は「いまの支出額」で、そこから先には行けない。稼ぐ側に上限はないが、時間がかかり確実でもない。どちらも一度動かせば毎年効くので、早いほど得になる。

筆者の固定費削減は、年31万円で頭打ちになった

まず、どこまで削ったかをお見せします。固定費を年31万円削減した6つの方法で書いた内訳です。

表1 筆者が削った固定費と、その効果

削った項目年間の削減額
医療保険・生命保険の解約20.0万円
インターネット固定回線の解約5.7万円
新聞の解約3.6万円
自動車の車両保険の解約・見直し1.3万円
火災保険の見直し0.7万円
携帯電話を格安SIMへ変更ほぼ0円
合計31.3万円

この表で伝えたいのは、削減額の大きさではありません。効いたのは保険1つだけで、残り5つを全部足しても11万円にしかならないということです。よく勧められる格安SIMにいたっては、筆者の場合ほぼ0円でした。

そして次に削るなら、食費と趣味しか残っていません。そこは生活の質そのものです。筆者はここで削るのをやめました。何にいくら使っているかはマネーフォワードMEとライフプランシートで家計管理を始める方法で把握できます。まだの方は、削る前にここからです。

削るお金と稼ぐお金は、効き方が違う

表2 支出を減らす/手取りを増やす の違い

比べる点支出を減らす手取りを増やす
効き始めるまで翌月から数か月〜数年
確実さほぼ確実やっても上がらないことがある
上限今の支出額までなし
効果の続き方どちらも一度動かせば、毎年ずっと効く

いちばん大事なのは最後の”効果の続き方”です。どちらも一度やれば毎年効きます。保険を解約した20万円は、今年も来年も20万円です。同じように、年収が上がればその差は働いているあいだずっと続きます。

つまりどちらも「早くやるほど得」という点では同じです。違うのは、削る側は確実だが天井があり、稼ぐ側は不確実だが天井がないという点だけです。

年収が上がっても、入金力は同じだけ上がらない

ここで、投資をしている人だけが気にすべき話をします。額面が増えても、投資に回せる額は同じだけ増えません。

会社員が給与から引かれる社会保険料は、2026年度 (令和8年度) の場合、本人負担で次のとおりです。40歳以上・東京都・一般の事業の例です。

表3 給与から引かれる社会保険料 (本人負担・2026年度)

項目本人負担
厚生年金保険9.150%
健康保険 (東京支部) 4.925%
介護保険 (40歳以上65歳未満) 0.810%
雇用保険 (一般の事業) 0.500%
子ども・子育て支援金0.115%
合計15.500%

いちばん下の子ども・子育て支援金は、2026年4月分から新しく始まった負担です ( 出典:全国健康保険協会 令和8年3月分からの保険料額表、厚生労働省 令和8年度雇用保険料率のご案内 ) 。手取りを減らす要素は、こうして少しずつ増えていきます。

これに所得税と住民税が乗ります。国税庁の速算表では、課税所得195万〜330万円の区分で所得税10%、330万〜695万円で20%です ( 出典:国税庁 No.2260 所得税の税率 ) 。住民税の所得割は10%です。

ここが分かりにくいところなので、順番に計算します。額面が年50万円増えた場合です。

表4 額面が年50万円増えたとき、何がいくら引かれるか

手順計算金額
① 社会保険料 15.5%500,000 × 15.5%77,500円
② 増えた課税所得500,000 − 77,500422,500円
③ 所得税 10%422,500 × 10%42,250円
④ 復興特別所得税 2.1%42,250 × 2.1%887円
⑤ 住民税 所得割 10%422,500 × 10%42,250円
引かれる合計①+③+④+⑤162,887円
手取りの増加500,000 − 162,887337,113円

ポイントは②です。所得税と住民税は、額面ではなく「社会保険料を引いた後の金額」にかかります。社会保険料は全額が所得控除になるからです。ここを飛ばして「15.5% + 10% = 25.5%」と計算すると、答えが合いません。

そして忘れやすいのが⑤の住民税です。所得税と同じ10%が、もう一度かかります。しかも住民税は前年の所得に対して翌年課税されるので、昇給した年ではなく、その次の年から効いてきます。増えたつもりで使っていると、翌年に足りなくなります。

結果はこうなります。額面が年50万円増えても、手取りは約34万円しか増えません。所得税10%の区分での話です。20%の区分に入っていれば約29万円、額面の6割まで落ちます。

額面が年50万円増えても社会保険料と税で目減りし手取りは約34万円
図2:額面が年50万円増えたときの内訳。社会保険料77,500円、所得税と復興特別所得税43,137円、住民税42,250円が引かれ、手取りに残るのは337,113円。所得税と住民税は額面ではなく、社会保険料を引いた422,500円にかかる。

だから筆者は、「年収がいくら上がったか」ではなく「毎月の投資額がいくら増えたか」で見ています。額面はあくまで会社側の数字です。入金力は、そこから3割以上引かれた後の数字です。

みらい
みらい

3割も引かれちゃうんだ。じゃあ年収を上げても意味ない?

たく
たく

意味はあるよ。7割は残るし、その差はずっと続くからね。ただ「50万円上がった=50万円積立を増やせる」と思っていると、必ず足りなくなる。7割で計算しておくことが大事なんだ。

50代でも収入は上がるのか|公的統計で見る

ここは意見が割れるところなので、転職サービスの自社データではなく、厚生労働省の統計を見ます。

「雇用動向調査」は、転職した人の賃金が前職と比べてどう変わったかを毎年調べています。令和6年 (2024年) の結果です。

表5 転職した人の賃金変動 (年齢階級別・2024年)

年齢階級増加減少増加−減少
全体40.5%29.4%+11.1pt
45〜49歳46.4%23.8%+22.6pt
50〜54歳39.0%28.2%+10.8pt
55〜59歳27.4%36.6%−9.2pt
60〜64歳13.6%60.9%−47.3pt

出典は厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」転職入職者の状況です。

この表には、はっきりした境目があります。

54歳までは、上がった人のほうが多い。ところが55歳で逆転します。45〜49歳では上がった人が22.6ポイント上回っているのに、55〜59歳では下がった人のほうが9.2ポイント多くなります。60代に入ると47.3ポイントの差です。

もうひとつ、同じ年齢を指している統計があります。「賃金構造基本統計調査」によると、男性の賃金は55〜59歳がピークで、月44.4万円。60〜64歳では34.5万円まで下がります。22.4%の減少です ( 出典:厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」年齢階級別賃金 ) 。

賃金がピークを打つ年齢と、転職で賃金が上がらなくなる年齢が一致しています。偶然ではないと筆者は考えています。

ここから言えることは、「50代の転職は遅い」ではありません。54歳までと55歳からは別物だということです。

もうひとつ、全体の数字も見ておいてください。上がった人は40.5%です。6割は増えていません。転職を勧める側があまり前に出さない数字ですが、判断するならこちらも要ります。

筆者の年収が上がったのは「業界を変えたとき」だけだった

筆者は転職を3回しています。就職氷河期に社会人になり、そこから年収は2.6倍になりました。振り返って共通していたのは、大きく動いたのは業界を変えたときだけだということです。

同じ業界の中で会社を移っても、その業界の相場から出られません。給与水準は個人の能力より、どの業界にいるかでほぼ決まっているというのが筆者の実感です。

実際に何が起きたかは大企業からベンチャー企業へ転職した人の末路に書きました。うまくいった話だけではありません。転職の進め方そのものはジョブ型雇用の時代には転職エージェント登録が必須にまとめています。

副業か、昇給か|天井の位置が違う

収入を増やすと聞くと、多くの方がまず副業を考えます。どちらが正解かは人によります。ただし、選ぶ前に知っておくべき違いがあります。

表6 副業と昇給、それぞれの強みと弱み

比べる点副業昇給 (転職・出世)
収入の上限ないある
下がりにくさそもそも伸びないことがあるその会社にいる間は続く
必要な時間本業の後の時間を使う追加の時間は要らない
分かれ目合うものに出会えるか業界と職種でほぼ決まる

まず会社員の収入には、はっきりした天井があります。先ほどの賃金構造基本統計調査で、20代前半を100とすると男性の55〜59歳は189.6です。20代前半と50代後半を比べても、1.9倍の差しかありません。

ひとつ注意があります。これは同じ人を追いかけた数字ではありません。2024年時点の20代と50代を横に並べた比較です。ですから「自分の給与が生涯で1.9倍になる」という意味ではありません。それでもいまの日本の会社員が、どのくらいの幅の中にいるかは分かります。所定内給与額なので、残業代と賞与は含みません。

その点、副業に上限はありません。自分に合うものを見つけられれば、会社員の給与を超えて伸びていきます。ただし合うものに出会えるかどうかは、やってみないと分かりません。そして会社員である以上、使える時間は本業の後に限られます。

一方の昇給には、副業にない強みがあります。一度上がれば、その会社で働いているあいだは高い確率で保証されます。翌月いきなり半分になることは、まず起きません。入金力は「毎月いくら積み立てられるか」なので、この読みやすさが効きます。

整理すると、副業は天井がないかわりに不確実、昇給は天井があるかわりに安定しているということです。いま時間が取れるか、合う副業の心当たりがあるかで、選ぶ側が変わります。

筆者は本業側で動いてきました。会社員の給与を動かすには、業界を変えるか、掛け合わせで希少性を作るかのどちらかだと考えています。

掛け合わせの考え方はエンジニア×英語は10%以下の希少性に書きました。資格もひとつの手段で、筆者は簿記を取っています ( 簿記資格取得 ) 。ただし資格そのものが単価を上げるわけではありません。いまの仕事と掛け合わせたときに、はじめて希少性になります。

入金力がいちばん伸びるのは、昇給分を使わなかった日

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

収入を上げる話は世の中にたくさんありますが、上げた後に何が起きるかは、あまり書かれていません。

昇給しても、その分だけ生活が膨らめば、入金力は1円も増えません。家賃を上げる。車を買い替える。外食が増える。どれも自然に起きます。そして一度上げた生活は、あとから戻すのがとても苦しい。

だから筆者は、こうしています。昇給した月に、増えた分の積立設定を先に変えます。生活に流れ込む前に、投資のほうへ回してしまいます。

これは我慢ではありません。生活水準を上げなければ、そもそも手放すものがないからです。広い家に住み、新しい車に乗り、外食に慣れてから元の暮らしに戻すのは、たしかに苦しい。ですが最初から上げなければ、その苦しさは起きません。使い道を決めていないお金が生活に流れ込むのを、先に止めるだけです。

昇給したあと生活を上げるか積立を上げるかで入金力に差がつく
図3:同じ昇給でも、生活を上げれば入金力は変わらず、積立を上げれば入金力が増える。差がつくのは昇給した日ではなく、昇給を使わなかった日。

入金力が伸びるのは、昇給した日ではありません。昇給分を使わなかった日です。

50代は「下がる時期を遅らせる」ことも入金力

50代には、若い人にはない論点があります。収入が下がる時期が、もう見えていることです。

先ほどの統計のとおり、男性の賃金は55〜59歳をピークに、60〜64歳で22.4%下がります。役職定年や再雇用が理由です。これは個人の努力とは別のところで起きます。

ここで発想を変えます。入金できる期間を1年延ばすことは、入金力を上げるのと同じ効果があります。毎月同じ額を積み立てているなら、1年長く働けば、そのまま12か月分の入金が増えます。

だから筆者は、働く期間の設計まで含めて入金力だと考えています。いくら稼ぐかだけでなく、いつまで稼げる状態でいるか。健康も、スキルの更新も、ここに入ります。

まとめ|削る、測る、上げる、使わない、延ばす

もう一度、結論です。節約には天井があり、収入には天井がありません。「もう削るところがない」は限界ではなく、次の段階に来た合図です。

  • 削る:先に固定費。筆者は年31万円で頭打ちになった
  • 測る:額面ではなく手取りで見る。50万円増えても残るのは約34万円
  • 上げる:副業は上限がないが不確実、昇給は上限があるが下がりにくい。筆者が動いたのは業界を変えたとき
  • 使わない:昇給した月に、増えた分の積立設定を先に変える
  • 延ばす:入金できる期間を1年延ばすのも、入金力を上げるのと同じ

そして統計が示した境目を、もう一度書いておきます。転職で賃金が上がる人のほうが多いのは54歳まで。55歳で逆転します。動くつもりがあるなら、この年齢は覚えておいてください。

よくある質問

Q1. 固定費削減と収入増、どちらを先にやるべきですか?

固定費削減が先です。収入が増えても、支出の穴が開いたままではそこから漏れていきます。しかも固定費の見直しは翌月から確実に効きます。まず固定費を削り切って、天井に当たってから収入側へ移ってください。

Q2. 50代から転職して年収は上がりますか?

厚生労働省の統計では、50〜54歳は上がった人が39.0%、下がった人が28.2%で、上がった人のほうが多数派です。ただし55〜59歳では逆転し、下がった人が36.6%になります。54歳までと55歳からで景色が変わると考えてください。

Q3. 副業と昇給、どちらが入金力に効きますか?

人によります。自分に合う副業を見つけられれば、そちらが伸びます。副業の収入に上限はありません。会社員の給与には天井があり、統計では20代前半と50代後半の差が1.9倍程度です。ただし会社員には時間の制約があり、合う副業に出会えるかどうかも、やってみるまで分かりません。

一方で昇給には「下がりにくい」という強みがあります。転職や出世で上がれば、その会社で働いているあいだは高い確率で保証されます。毎月いくら積み立てられるかを決めたい入金力の話では、この読みやすさが効きます。上限を取りにいくなら副業、安定を取るなら昇給という選び方になります。

Q4. 入金力はいくらあればいいですか?

金額の正解はありません。逆算して決めるものです。いつまでにいくら必要かが分かれば、毎月いくら入金すべきかも決まります。考え方は貯める (べき) お金の目標金額を逆算に書きました。

Q5. 収入が増えたら、増えた分は全部投資に回すべきですか?

全部でなくて構いません。大事なのは、生活に流れ込む前に配分を決めておくことです。半分を投資、半分を生活に回すと先に決めておけば、それも立派に入金力が増えています。決めないまま過ごすと、たいてい全部が生活に吸われます。

Q6. 役職定年で収入が下がったら、投資はやめるべきですか?

やめる必要はありません。下がるのは入金の額であって、すでに積み上げた資産は働き続けます。むしろ下がることが分かっているなら、下がる前の数年でどれだけ入れておけるかが効いてきます。生活防衛資金だけは崩さないでください。

この記事は筆者個人の経験と考え方をまとめたものです。特定の転職サービスや金融商品を勧めるものではありません。税率・保険料率は2026年8月時点のもので、都道府県や年度によって変わります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました