持株会の案内に「奨励金10%」と書いてあった。でも、それが高いのか低いのか、比べる相手がいない——そんな方に向けた記事です。東京証券取引所が2026年2月に公表した最新調査 (上場3,265社) をもとに、奨励金の相場をはっきりさせます。あわせて、奨励金10%を受け取りながら最終的に自社株をゼロにした経験者として、率で判断してはいけない理由もお伝えします。

うちの会社、持株会の奨励金が10%なんだって。なんだかお得な気がするけど、これって多いほうなの?

ちょうど、いちばん多い水準だよ。東証が毎年調べていて、最新の調査だと3,265社のうち1,391社が10%だった。ただね、「多いか少ないか」で入るかどうかを決めると、たぶん判断を間違えるんだ。
結論|いちばん多いのは10%。平均は10.7%
先に結論をお伝えします。
- 奨励金を出している会社は 96.6% (3,154社)
- いちばん多い水準は 10% で、42.6% (1,391社)
- 次に多いのが 5% で、26.7% (873社)
- 平均は 10.7% (拠出1,000円あたり107.24円)
つまり「奨励金10%」は、上場企業ではもっとも一般的な水準です。特別に恵まれているわけでも、損をしているわけでもありません。
ただ、この記事でいちばんお伝えしたいのはその先にあります。奨励金の率で、持株会に入るかどうかを決めないでください。理由は後半で書きます。
奨励金の水準ごとに何社あるかを図1に示します。

東証データで見る|奨励金の相場
図1のとおり、相場を知るうえで押さえるべきは「10%」と「5%」の2つです。数字の出どころは、東京証券取引所「2024年度従業員持株会状況調査結果の概要について」 (2026年2月16日公表) です。東証上場の内国会社3,956社のうち、従業員持株制度を持つ3,265社を調べたもので、調査時点は2025年3月31日です。
なお、この調査でいう「奨励金額」とは、拠出金1,000円につき会社から支給される金額を指します。100円なら10%、50円なら5%という読み方になります (買付手数料などの補助は含みません) 。
96.6%の会社が奨励金を出している
奨励金を支給しているのは3,154社。全体の96.6%です。持株会がある会社なら、まず奨励金はあると考えていいでしょう。
逆に言えば、支給していない会社も111社 (3.4%) あります。「持株会があるのに奨励金がない」場合、それは制度として少数派です。
最多は10%、次が5%。この2つで約7割
表1 奨励金額ごとの支給会社数 (2024年度・3,265社)
| 奨励金額 | 率に直すと | 会社数 | 比率 |
|---|---|---|---|
| 50円 | 5% | 873社 | 26.7% |
| 100円 | 10% | 1,391社 | 42.6% |
| 200円 | 20% | 240社 | 7.4% |
| 300円 | 30% | 50社 | 1.5% |
| 500円 | 50% | 22社 | 0.7% |
| 1,000円 | 100% | 19社 | 0.6% |
10%と5%を合わせると69.3%。およそ7割が、このどちらかです。もし勤め先が5%か10%なら、それは「よくある水準」だと考えて差し支えありません。
平均は10.7%。しかも上がっている
表2 奨励金の平均額と最高額
| 年度 | 平均 | 最高 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 99.79円 | 3,000円 |
| 2024年度 | 107.24円 (=10.7%) | 3,000円 (=300%) |
平均は前年から7.45円増えて、過去最高を更新しました。人材の確保が難しくなるなかで、待遇のひとつとして奨励金を引き上げる会社が出てきている、ということだと思います。
20%超も、100%も、ゼロもある
「奨励金100%の会社なんてあるの?」と思われるかもしれません。あります。
- 20% (200円) …240社
- 30% (300円) …50社
- 50% (500円) …22社
- 100% (1,000円) …19社
そして最高額は3,000円、つまり300%です。1万円を拠出すると4万円分の自社株が買える計算になります。数は少ないものの、そういう会社も実在します。
ただし、ここで立ち止まってください。率が高いということは、その会社の株が、より速く積み上がっていくということでもあります。この点は後半で詳しく書きます。
業種によって1.8倍の差がある
「うちは10%だけど、業界的にはどうなんだろう」。そう思われた方のために、業種別の平均も見ておきます。
表3 業種別の平均奨励金額
| 水準 | 業種 | 平均奨励金額 | 率 |
|---|---|---|---|
| 高い | 証券、商品先物取引業 | 145.00円 | 14.5% |
| 情報・通信業 | 143.95円 | 14.4% | |
| 石油・石炭製品 | 141.40円 | 14.1% | |
| 鉱業 | 133.33円 | 13.3% | |
| 倉庫・運輸関連業 | 132.41円 | 13.2% | |
| 低い | 空運業 | 80.00円 | 8.0% |
| 銀行業 | 83.49円 | 8.3% | |
| 水産・農林業 | 85.76円 | 8.6% | |
| 食料品 | 86.32円 | 8.6% | |
| 金属製品 | 87.31円 | 8.7% |
最高の証券・商品先物取引業 (145.00円) と、最低の空運業 (80.00円) では約1.8倍の開きがあります。ちなみに社数の多い業種では、電気機器99.63円、機械97.49円、輸送用機器113.67円、化学91.90円、小売業89.38円、サービス業115.55円でした。
業種別の平均を、高い順・低い順に5業種ずつ図2に示します。

自分の会社の奨励金が低く感じても、業種の水準を見ると納得できることがあります。逆に、同業他社より明らかに低ければ、それは業界ではなく会社の方針です。
毎月いくらもらえる?拠出額別の早見表
率だけだと実感が湧きにくいので、金額に直しておきます。
表4 拠出額別 奨励金の早見表
| 毎月の拠出額 | 奨励金5% | 奨励金10% | 奨励金20% |
|---|---|---|---|
| 5,000円 | 月250円/年3,000円 | 月500円/年6,000円 | 月1,000円/年12,000円 |
| 10,000円 | 月500円/年6,000円 | 月1,000円/年12,000円 | 月2,000円/年24,000円 |
| 20,000円 | 月1,000円/年12,000円 | 月2,000円/年24,000円 | 月4,000円/年48,000円 |
| 30,000円 | 月1,500円/年18,000円 | 月3,000円/年36,000円 | 月6,000円/年72,000円 |
図3の強調した行がその例です。毎月2万円を奨励金10%で積み立てているなら、月2,000円・年24,000円が会社から上乗せされている計算です。決して小さくはありません。
拠出額と奨励金率の組み合わせごとの上乗せ額を図3に示します。

これを20年続けるといくらになるのか、同じ金額をインデックス投資に回した場合とどう違うのかは、持株会と新NISA、どっちを優先?で計算しています。
見落としがち|奨励金は「給与」なので課税される
ここが、意外と書かれていない話です。
根拠を2つ挙げておきます。ひとつは国税庁・税務大学校の研究論文で、従業員持株会について「原則として……給与所得になるものと考える」と整理されています (税務大学校論叢 第70号「従業員持株会の課税関係に関する一考察」) 。もうひとつは実務面で、持株会の事務委託を受けている証券会社の説明です。大和証券の持株会Q&Aには、奨励金は会員の給与所得の一部であり、勤務先が毎月源泉徴収して年末調整の対象になる、と明記されています。
奨励金は原則として給与所得として扱われ、所得税がかかります。持株会制度が従業員への福利厚生を目的とするものであることから、会社が上乗せするお金も給与と同じ扱いになる、という考え方です。給与所得は住民税の課税対象でもあるため、所得税と住民税の両方が差し引かれることになります。
つまり、額面10%は、手取りベースでは10%より小さくなります。
表5 税率別 額面10%の奨励金の手取り換算
| 所得税+住民税の税率 | 額面10%の奨励金は |
|---|---|
| 15% | 実質 8.5% 相当 |
| 20% | 実質 8.0% 相当 |
| 30% | 実質 7.0% 相当 |
| 43% | 実質 5.7% 相当 |
額面10%が税率ごとにどこまで目減りするかを図4に示します。

これは持株会を否定する話ではありません。目減りしても、上乗せは上乗せです。ただ「10%まるごと得している」と思っていると、あとで計算が合わなくなります。
なお、持株会で受け取る配当金の税金や、売却したときの税金・確定申告は、これとはまた別の話になります。そちらは持株会の税金と確定申告|配当控除でいくら戻る?にまとめています。
奨励金が高い会社は「お得」なのか|私の答え
ここからは、データではなく私の考えです。
率が高いほど、1社への集中も大きくなる
奨励金が20%の会社は、10%の会社の2倍おトク——ではありません。2倍の速さで、1社の株が積み上がっていくということです。
奨励金は、買うときに一度だけ乗る上乗せです。買ったあとの値動きは、その1社の業績と株価に委ねられます。率が高いほど「確実な上乗せ」も大きくなりますが、同時に「委ねる金額」も大きくなります。
私は10%をもらっていましたが、自社株はゼロにしました
私は会社員として持株会に加入し、奨励金を受け取っていました。率は10%。まさに、いちばん多い水準です。
それでも退会し、全株を売却しました。率に不満があったからではありません。
気づいたのは、すでに人的資本を投じている勤め先に、金融資本まで重ねているということでした。給料もその会社から出ていて、資産もその会社の株。もし会社が傾けば、収入と資産が同時に減ります。
奨励金10%は、その構造を引き受ける対価として見合うのか。私の結論は「見合わない」でした。あなたはどう判断されるでしょうか。
だから、率で判断してはいけない
奨励金が20%でも30%でも、買っている中身が自社1社であることは変わりません。率が上がったときに変わるのは「よりお得だから入ろう」ではなく、「より速く集中していくけれど、それでいいか」という問いのほうです。
持株会と新NISA、どちらを優先すべきかという判断そのものは、持株会と新NISA、どっちを優先?で詳しく書きました。
それでも自社株を持ちたい人へ|何%までなら
「全部売るのは抵抗がある」という方もいると思います。気持ちは分かります。
目安としては、日本株全体のなかで多くても2〜3%、できれば1%までだと考えています。
理由は単純です。私はいま日本の高配当株を93銘柄持っていて、均等に持っていると仮定すると1銘柄あたり約1.08%になります。つまり「自社株を3%持つ」というのは、33銘柄への投資と同じ集中度だということです。
表6 1銘柄あたりの比率と分散銘柄数
| 1銘柄あたり | その比率で分散すると |
|---|---|
| 1%ずつ | 100銘柄 |
| 2%ずつ | 50銘柄 |
| 3%ずつ | 33銘柄 |
自社株1社にこれを超える比率を割いているなら、それは相当に高いリスクを負っているということになります。

10%が相場だって分かってスッキリした。でも、相場どおりだからって安心しちゃいけないんだね。

そう。奨励金の率が教えてくれるのは「いくら上乗せされるか」だけなんだ。本当に知りたいのは、自分の資産全体のうち自社株が何%を占めているか。これは率をいくら眺めても分からないから、自分で計算するしかない。私は計算してみて、自社株をゼロにしたよ。
まとめ|相場は10%。でも、率で決めない
- 奨励金を出している会社は96.6%。いちばん多い水準は10%で42.6%、次が5%で26.7%。この2つで約7割
- 平均は10.7% (拠出1,000円あたり107.24円) 。前年から上がって過去最高
- 100%出す会社も19社ある一方、ゼロの会社も111社。業種でも最大1.8倍の差がある
- 奨励金は給与として課税される。額面10%は、手取りでは10%ではない
- それでも、入るかどうかを率で決めない。率が高いほど、1社集中も速く進む
私は奨励金を10%受け取っていましたが、最終的に自社株をゼロにしました。その判断の中身は持株会と新NISA、どっちを優先?に、やめるときの手続きは持株会のやめ方に、退職・転職するときの扱いは持株会は退職・転職するとどうなる?にまとめています。
よくある質問
Q1. 奨励金は毎月いくらもらえますか?
拠出額と率で決まります。もっとも多い10%なら、毎月1万円の拠出で月1,000円、2万円の拠出で月2,000円です。上の早見表をご覧ください。
Q2. 奨励金100%の会社はありますか?
あります。東証の調査では19社が拠出金1,000円あたり1,000円 (=100%) を支給していました。最高額は3,000円 (=300%) です。ただし全体の1%にも満たない少数です。
Q3. 奨励金に税金はかかりますか?
かかります。原則として給与所得となり、所得税・住民税の対象になります。勤務先が毎月源泉徴収し、年末調整の対象になるのが一般的です (大和証券 持株会Q&A) 。配当金や売却益の税金は別扱いで、持株会の税金と確定申告で解説しています。
Q4. 奨励金だけもらって、すぐ売ってもいいですか?
制度上は売却できますが、売る前にインサイダー取引規制と社内ルールの確認が必要です。また持株会の株は単元に達するまで引き出せないのが一般的で、「すぐ売る」は思ったほど簡単ではありません。持株会の株を売るとインサイダー取引になる?と持株会の株はいつ売る?をご覧ください。
Q5. 奨励金の率が高ければ、持株会を優先していいですか?
私はそう考えていません。率が高いほど1社への集中も速く進むためです。判断は率ではなく、資産全体のなかで自社株が何%になるかで決めてください。
Q6. みんな入っているものですか?
持株会がある会社の従業員のうち、加入しているのは40.12%です。前年度の37.82%から2.30ポイント上昇しています。おおよそ「4割が入っていて、6割は入っていない」という状況です。
※ 本記事の数値は東京証券取引所「2024年度従業員持株会状況調査結果の概要について」 (2026年2月16日公表、調査時点2025年3月31日) に基づく2026年8月時点の情報です。奨励金の率・支給方法・税務上の取扱いは会社の規約や個別事情により異なります。奨励金の課税上の取扱いについては国税庁・税務大学校論叢 第70号および大和証券 持株会Q&Aを参照しました。最新の内容は勤務先の持株会事務局および日本取引所グループの公表資料でご確認ください。本記事は運営者個人の実体験と考え方をまとめたものであり、特定の投資手法を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


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