iDeCoの掛金を増やそうとしたのに、思ったほど出せない。あるいは、いつの間にか掛金が下がっていた。そんな経験はありませんか。2024年12月の改正で、会社に企業年金がある会社員の上限は月1万2,000円から月2万円へ引き上げられています。そう報じられ、私もそう読みました。
そこで掛金を2万円に増やしたところ、その翌月には1万円になっていました。自分が何かを間違えたわけではありません。iDeCoの枠は、5.5万円から会社の企業年金の分を引いた残りで決まるからです。
筆者は52歳の会社員で、2021年1月からiDeCoを続けています。実際に掛金が1万2,000円から6,000円まで下がりました。
- 自分のiDeCoの枠がいくらになるかの調べ方
- 掛金が勝手に下がる仕組みと、届く書面の名前
- 2026年12月の改正で枠がどう変わるか
- 枠が戻っても、増やすべきか据え置くかの判断軸

上限が上がったのに、下がるってどういうこと?

2万円というのは「ここまで」という枠であって、みんなが2万円出せるわけじゃないんだ。会社の企業年金の分を引いた残りが、自分の枠になる。だから会社の都合で変わるんだよ。
結論|上限は上がり、私の掛金は下がりました
先に何が起きたかをお伝えします。制度の上限は確かに引き上げられました。それでも私の掛金は、引き上げの前より少なくなったのです。
表1 筆者のiDeCo掛金の推移
| 時期 | 掛金 ( 月額 ) | 何が起きたか |
|---|---|---|
| 2021年1月分〜 | 12,000円 | 当時の上限いっぱい |
| 2024年12月分 | 20,000円 | 改正で上限が上がったので、自分で増額した |
| 2025年1月分 | 10,000円 | 翌月、自動調整で上限どおりの額に |
| 2025年5月分〜 | 6,000円 | 会社の企業年金の掛金が上がり、さらに減った |
増やした翌月に、半分になりました。手続きを間違えたわけでも、申請が通らなかったわけでもありません。制度どおりの結果です。
証券会社の画面では、2万円で設定できてしまいました
順番はこうでした。2024年12月の改正で上限が2万円になったので、証券会社の画面から掛金を2万円に変更しました。設定はそのまま通り、その月は2万円で積み立てられています。
ところが同じ時期に、勤務先の企業年金の掛金も上がっていました。そのため私の実際の上限は2万円ではなく、1万円でした。合算の上限を超えていることが後から検出され、翌月には1万円に戻されています。
画面で設定できたからといって、その額を出せるとは限りません。少なくとも設定の時点では、会社の企業年金の掛金は反映されていませんでした。
「自動調整のお知らせ」という書面が届いていました
あとから探して見つけました。「企業年金等の掛金額変更によるiDeCo掛金の自動調整のお知らせ」という書面です。国民年金基金連合会から、証券会社を経由して郵送されていました。
制度上は「自動調整」と呼ばれています。国民年金基金連合会が、iDeCoの掛金と会社の企業年金の掛金相当額を合算し、上限を超えていれば、超えない額まで自動的に引き下げるという仕組みです。本人が何かを申請するわけではありません。
心当たりのある方は、この書面名で探してみてください。郵送物のほか、iDeCoの会員ページの「お知らせ」や、年1回届く「お取引状況のお知らせ」でも掛金額を確認できます。

2万円は、配られる枠ではありません
2024年12月の改正は、こう説明されました。確定給付企業年金 ( DB ) などに入っている会社員のiDeCoの上限が、月1万2,000円から月2万円になる。ここまでは事実です。
ただし、同じ改正にもう一つの条件があります ( 出典:政府広報オンライン iDeCoがより活用しやすく!2024年12月法改正のポイント ) 。
各月の企業型DCの事業主掛金額と、確定給付型ごとの他制度掛金相当額と合算して、月額5.5万円を超えることはできません。
つまり自分の枠は、こう決まります。
表2 iDeCoの掛金の上限の決まり方 ( 2024年12月〜 )
| 計算 | |
|---|---|
| 自分が出せる額 | 5.5万円 − 会社の企業年金の掛金相当額 |
| ただし | 2万円が上限 ( これを超えては出せない ) |
| 会社の掛金相当額が大きいと | 2万円を下回る |
2万円は「ここまで」という天井であって、全員に配られる枠ではありません。会社の企業年金の掛金相当額が4万9,000円なら、自分の枠は6,000円になります。

じゃあ、会社の年金が手厚い人ほど、iDeCoは使えないんだ。

そういうことになるね。iDeCoは「足りない分を自分で積む制度」だから、会社が積んでくれている分は差し引かれる。理屈は通っているんだけど、報道の見出しだけ読むと分からないんだ。
5,000円を下回ると、そもそも入れません
もう一つ知っておくことがあります。iDeCoの掛金には最低額 ( 月5,000円 ) があります。会社の掛金相当額が大きくて、5.5万円から引いた残りが5,000円を下回る場合、iDeCoに加入できません。
すでに加入している人でも、会社の掛金相当額が上がれば、そこに近づいていきます。私の6,000円は、その一歩手前です。
枠を決めるのは、自分ではなく会社です
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。iDeCoは自分で申し込み、自分で金額を決める制度のはずですが、実際に出せる額は会社が握っています。
会社の企業年金の掛金相当額は、毎年見直されます。そして、それが上がると自分のiDeCoの枠は削られます。自分の意思とは関係ありません。
私の場合、2025年1月分で1万円になり、2025年5月分からは6,000円になりました。会社の企業年金の掛金が上がったためです。会社としては従業員のために積立を厚くしたのであって、悪いことをしたわけではありません。それでも、自分で決めたはずの積立額は動きます。

会社が積んでくれるなら、いいことなんじゃないの?

そこは悪い話じゃないんだ。会社が退職金を厚くしてくれたわけだからね。ただ、自分で決めたはずの積立額が動くのは、知っておいたほうがいいよ。
持株会でも同じことを感じました。持株会に入るべきかで書いたとおり、会社の制度は入るときも、やめるときも、金額を決めるときも、自分だけでは決められません。

2026年12月に、また変わります
次の改正が控えています。2026年12月分 ( 2027年1月の引き落とし分 ) から、企業年金とiDeCoを合算した上限が月6.2万円になります。あわせてiDeCo単体の上限 ( 2万円 ) は廃止され、加入できる年齢も70歳未満まで広がります ( 出典:楽天証券 2026年12月制度改正 ) 。
表3 2024年12月と2026年12月の改正
| 2024年12月〜 | 2026年12月〜 | |
|---|---|---|
| 合算の上限 | 5.5万円 | 6.2万円 |
| iDeCo単体の上限 | 2万円 | 廃止 |
| 加入できる年齢 | 65歳未満 | 70歳未満 |
合算の枠が7,000円増えるので、私の枠も6,000円から1万3,000円ほどに戻る見込みです。

戻るなら、また増やすんじゃないの?
それでも私は、増やしません。
枠が戻っても、私が増やさない3つの理由
ここからは筆者個人の判断です。全員に当てはまる話ではありません。
A. 出口の税金が複雑で、考えることが多い
iDeCoは入り口 ( 掛金が全額所得控除 ) が分かりやすい一方、出口が複雑です。一時金で受け取るか、年金で受け取るか、併用するか。退職金とどちらを先に受け取るか。それぞれで税金が変わります。
しかも2026年1月から、iDeCoの一時金と退職金の「5年ルール」が「10年ルール」に変わりました。受け取る順番と間隔で、手取りが変わります。増やせば増やすほど、この判断の重みが増していきます。
B. 受け取りまで8年で、投資期間としては短い
私は52歳です。受け取れるようになるまで、あと8年ほどしかありません。
いまから掛金を増やしても、その分が値上がりする期間は短くなります。60歳の手前で相場が下がれば、増やした分がそのまま目減りします。10年、20年と持てるお金とは、同じ扱いにできません。
C. 老後資金には、すでに目処が立っている
ライフプラン表を14年つけてきて、老後に必要な額と、そこに届くかどうかは把握できています。足りないなら無理をしてでも積む必要がありますが、目処が立っているなら、節税だけを理由に動かす必要はありません。
ライフプラン表の作り方はマネーフォワードMEとライフプランシートで家計管理を始める方法に書きました。

節税できるのに、もったいなくない?

節税は目的じゃなくて手段だからね。60歳まで引き出せないお金を増やすと、その間の選択肢が減る。私は目処が立っているから、そこまでして枠を埋めにいかないことにしたよ。
では、増やしたほうがいい人は誰か
私が増やさないからといって、増やさないほうがいいという話ではありません。条件が違えば答えも変わります。
表4 枠が広がったとき、増やす判断がしやすい人
| 状況 | 増やす判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 受け取りまで15年以上ある | しやすい | 値動きをならす期間がある |
| 老後資金が足りていない | しやすい | 積む必要がある |
| 所得税率が高い | しやすい | 所得控除の効果が大きい |
| 受け取りまで10年を切っている | 慎重に | 下落から戻す時間が短い |
| 手元の現金が薄い | 慎重に | 60歳まで引き出せない |
新NISAをまだ埋めていないなら、そちらが先だと考えています。いつでも引き出せるからです。順番の考え方は持株会と新NISA、どっちを優先?にまとめました。

まとめ|上限の数字だけを見ないでください
もう一度、結論です。上限が上がるという報道は間違っていませんが、それが自分にいくら配られるかは、会社の制度を見ないと分かりません。
- 2万円は天井であって、配られる枠ではない:5.5万円から会社の分を引いた残りが自分の枠
- 枠は会社の都合で動く:企業年金の掛金が上がれば、自分のiDeCoは削られる
- 5,000円を下回ると加入できない:私の6,000円は、その一歩手前
- 2026年12月に合算6.2万円へ:iDeCo単体の上限は廃止、加入は70歳未満まで
- 枠が戻っても、増やすかは別の判断:受け取りまでの年数と、老後資金の目処で決まる
「上限が上がります」という見出しは、間違ってはいません。ただ、それが自分にいくら配られるかは、会社の制度を見ないと分からないのです。私は増額してから、翌月にそれを知りました。
まずは自分の枠がいくらなのかを確かめてください。運営管理機関の画面か、勤務先の担当部署で確認できます。枠を知らないまま増額すると、私と同じことが起きます。
- 新NISAを埋めていないなら、そちらが先。いつでも引き出せる
- iDeCoは60歳まで引き出せない。その分、選択肢が減る
- 始めるなら受け取りまでの年数と老後資金の目処で判断する
筆者が使っているのは楽天証券のiDeCoです。新NISAと同じ画面で残高を確認できるのが、続けるうえで地味に効いています。手数料や取扱商品は変わることがあるので、申し込む前に公式サイトでご確認ください。本記事の制度の内容は2026年9月時点のものです。
よくある質問
Q1. 上限が2万円になったのに、なぜ私は2万円出せないのですか?
会社の企業年金の掛金相当額が差し引かれるためです。5.5万円から会社の分を引いた残りが自分の枠で、それが2万円を下回ることがあります。2万円は上限であって、全員に配られる額ではありません。
Q2. 掛金が勝手に下がることがあるのですか?
あります。会社の企業年金の掛金相当額は見直されるので、それが上がれば自分の枠は減ります。筆者は2024年12月分で2万円へ増額しましたが、同じ時期に会社の企業年金の掛金も上がっていたため、翌月には1万円になりました。証券会社の画面では2万円で設定でき、その月は積み立てられています。設定できることと、出せることは別です。
Q3. 枠が5,000円を下回るとどうなりますか?
iDeCoに加入できません。掛金の最低額が月5,000円だからです。すでに加入している場合の扱いは、運営管理機関と勤務先に確認してください。
Q4. 2026年12月の改正で、私の枠はいくらになりますか?
合算の上限が6.2万円に上がるので、会社の分を引いた残りが増えます。筆者の場合は6,000円から1万3,000円ほどに戻る見込みです。正確な額は運営管理機関からの案内で確認してください。
Q5. 枠が広がったら、増やしたほうがいいですか?
受け取りまでの年数と、老後資金の目処で決まります。15年以上あって、老後資金が足りていないなら増やす判断がしやすいです。10年を切っていて目処も立っているなら、急ぐ必要はありません。
Q6. 新NISAとiDeCo、どちらを先に使いますか?
筆者は新NISAを先にします。iDeCoは60歳まで引き出せないためです。所得控除はiDeCoにしかない利点ですが、引き出せないことは、それ自体が制約になります。
この記事は筆者個人の経験と考え方をまとめたものであり、特定の商品や制度の利用を勧めるものではありません。掛金の上限は勤務先の企業年金の内容によって一人ひとり異なります。制度は2026年9月時点のものです。ご自身の枠と手続きは、運営管理機関および勤務先でご確認ください。


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