持株会をやめて、そのお金を新NISAへ移したい。そう考えたとき、最初に知っておくことがあります。持株会の株を新NISAへ移すことはできません。売って、あらためて買い直すしかありません。この記事では、売ってから買い直すまでの手順と、そのあとの置き場所の決め方をお伝えします。筆者は52歳の会社員ですが、過去に持株会に入り、のちに退会して全株を売却しました。いまはインデックスファンド、米国高配当株のETFや投資信託、そして日本の高配当株を約90銘柄に分散して投資しています。

持株会の株、そのまま新NISAに移せないの?もったいない気がする。

移せないんだ。NISAで非課税になるのはNISA口座で新しく買った分だけだからね。だから売って、買い直すことになる。売れば税金もかかるから、そこも先に見ておこうか。
結論|移管はできません。売って、買い直します
先に答えをお伝えします。持株会の株を新NISA口座へ移すことはできません。新NISAで非課税になるのは、NISA口座で新しく買い付けた分だけだからです。
この点は、多くの持株会で事務委託先になっている大和証券が、はっきり書いています。
「NISA口座へ移管 (振替) することはできません。NISA口座で保有できるのは、NISA口座で新たに買付けた株式等になります。すでに持株会から引出 (または退会) して保有している株式についても、NISA口座へ移管 (振替) することはできません」 ( 出典:大和証券 よくあるご質問 )
「一度引き出してから、あとでNISAへ入れよう」もできません。引き出した株は課税口座に入るので、そこからNISAへは動かせないのです。
ですから、やることは3つになります。

ここで見落とされがちなのが③です。持株会の引き出し先は、会社が契約している事務委託先の証券会社に指定されているのが原則で、自分で選べません。一方、新NISAは自分で開いた口座で始めます。持株会だけで投資をしてきた方は、ここで初めて自分名義の証券口座を用意することになります。手順は【楽天証券】新NISA積立投資の始め方に画面つきで書きました。
売ると、利益の20.315%が税金になります
買い直す前に、必ず通るのが税金です。売却益には20.315%がかかります。いくら残るのかは、先に把握しておいてください。
理由は、上場株式の売却益が「申告分離課税」だからです。給与のように他の所得と合算されず、金額が大きくなっても税率が上がりません ( 出典:国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税 ) 。
表1 売却益にかかる税金
| 売却益 | 税額 | 税率 |
|---|---|---|
| 100万円 | 20.3万円 | 20.315% |
| 500万円 | 101.6万円 | 20.315% |
| 1,000万円 | 203.2万円 | 20.315% |
20.315%の内訳は、所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315% ( 所得税額の2.1% ) です。税率が一定なので、売る年を分けても合計は変わりません。1,000万円の利益なら、一度に確定させても3年に分けても約203万円です。

思ったより持っていかれるんだね。

そうだね。ただ税金のために売却を何年も引き延ばす必要はないよ。税率が一定だからね。分けるのは売り方じゃなくて、買い方のほうなんだ。
ひとつだけ補足します。売却益が増えると、ふるさと納税の上限額は上がります。住民税の所得割が増えるためです。税金が安くなるわけではありませんが、その年にふるさと納税をするなら、上限を計算し直してください。
売るのは一度。分けるのは「買う場所」です
売却は一度で終わります。では、どこで分けるのか。分けるのは売り方ではなく、買い方です。
売却は一度に全額です。そのうえで、買うときに2つに分けます。
- 年360万円まで:新NISA口座で買う
- 360万円を超えた分:特定口座で買う
新NISAで1年間に買えるのは、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円を合わせて、最大360万円です。生涯で使える枠は1,800万円ですが、こちらも一度には使えません ( 出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト ) 。
インデックス投資信託なら、超えた分を現金のまま置いておくことはしません。もともと持株会で株になっていたお金です。現金で寝かせる理由がないので、特定口座で先に買っておきます。
高配当の個別株を選ぶ場合は違います。タイミングを見て買うので、買う時期が来るまでは現金で持つことになります。これは寝かせている現金ではなく、買うための待機資金です。
そして翌年以降、特定口座のインデックス投資信託だけを、枠の範囲で新NISAへ買い直していきます。高配当の個別株は買い直しません。理由はステップ4でお伝えします。
では、その新NISAでの買い直しに何年かかるのか。目安になる公的なデータがあります。東京証券取引所が毎年調べている「従業員持株会状況調査」です ( 出典:日本取引所グループ 従業員持株会状況調査 ) 。
2024年度の調査 ( 2025年3月末時点 ) では、加入者1人当たりの平均保有金額は250.3万円でした。つまり平均的な加入者なら、売った年のうちに全額が新NISAへ入る計算です。
表2 持株会の残高別|全額が新NISAに入るまでの年数 ( インデックス投資信託の場合 )
| 持株会の残高 | かかる年数 |
|---|---|
| 100万円 | 1年 |
| 250万円 ( 加入者1人当たりの平均 ) | 1年 |
| 500万円 | 2年 |
| 1,000万円 | 3年 |

年数がかかるのは、売却ではなく買い直しのほうです。売るのは一度で終わります。税金ではなく、枠の話でした。

じゃあ何年もかかるって心配しなくていいの?

多くの人は1年か2年で終わるよ。何年もかかるのは、長く勤めて残高が大きくなった人だね。それに高配当株を選ぶなら買い直し自体をしないから、年数の話も出てこないんだ。
そのお金は、何のためのお金でしたか
手順の話に入る前に、確認しておきたいことがあります。そのお金は、何のためのお金だったのかということです。
持株会は、単元 (100株) に達するまで引き出せません。つまり最初から「すぐには使えないお金」でした。ということは、本来それは老後のためのお金か、当面使う予定のない余剰資金だったはずです。
ところが実際はどうでしょうか。目的を決めないまま、なんとなく積み立てていた方が多いと思います。奨励金が出るから、周りも入っているから、給与天引きで手間がかからないから。
筆者もそうでした。入会したときは「なんとなく儲かればいい」と思って買っていました。何歳のときにいくら必要で、そのために自社株がいくらあればいいのか。一度も考えていませんでした。

私も、たぶんそうなると思う。目的まで考えてないかも。

それが普通だよ。でもね、売って現金になったいまが、決め直すいい機会なんだ。持株会に入っていたあいだは会社が置き場所を決めてくれていたけど、これからは自分で決めることになるからね。
そして目的の設計は、ライフプランを作ることから始まります。何歳のときにいくら必要なのかが分からなければ、そのお金を「15年以上先に使う」のか「いまから受け取りたい」のかも決められないからです。作り方はマネーフォワードMEとライフプランシートで家計管理を始める方法にまとめました。
筆者は14年間、ライフプラン表を毎年更新しています。一度作って終わりではありません。前提が変われば引き直します。持株会をやめるというのは、まさに前提が変わったときです。
目的が決まれば、買うものと買い方が決まります
ここからが具体的な話です。判断は4つの段階に分かれます。

ステップ1|いつ使いたいかで、買うものが決まる
表3 使う時期で、買うものが決まる
| いつ使いたいか | 買うもの |
|---|---|
| 15年以上先 | インデックス投信のみ |
| いまから受け取りたい | 高配当個別株 |
金額でも年齢でもありません。使う時期で決まります。老後まで使わないお金なら、増やすことに専念できます。いまの生活を少し楽にしたいお金なら、配当として受け取る形が合います。
ステップ2|買い方は、商品で決まる
買い方は、商品で2つに分かれます。タイミングを見て買うのは、高配当の個別株だけです。インデックス投資信託は待たずに、一括で入れます。
表4 買い方と、あとでNISAへ移し替えるかどうか
| 買い方 | NISAへ移し替えるか | |
|---|---|---|
| インデックス投信 | 一括で入れる ( 待たない ) | 移し替える |
| 高配当個別株 | タイミングを見て買う ( 待つ ) | 移し替えない |
まず、インデックス投資信託のほうです。一括にする理由は「早く市場に入るため」ではありません。ここは大事なところです。
このお金は、持株会ですでにリスク資産として投資していたお金だからです。売った時点で一時的に現金になっただけで、現金のまま持ち続ける理由がありません。時間をかけて積み立て直すのは、わざわざ現金でいる期間を作ることになります。
まとまったお金だから一括、という単純な話ではありません。宝くじや相続でまとまったお金が入った場合は、理由が変わります。そちらは「早く市場に入るため」です。ただし投資が初めてで、誰かに相談しないと決められない状態であれば、積み立てから始めるほうが良いと筆者は考えています。値動きに慣れないうちに大きな金額を入れると、下がったときに続けられなくなるからです。
では、なぜ高配当個別株だけタイミングを見るのか。買った値段で利回りが決まるからです。同じ配当でも、安く買えば利回りは高くなります。インデックス投信には価格の良し悪しを判断する基準がないので待つ理由がありませんが、高配当株には利回りという基準があります。判断できるものは、判断します。
ステップ3|買う場所は、NISA枠に入るかどうかで分ける
売ったお金は、その年のうちに全額を投資に回します。分けるのは金額ではなく、置く口座です。
年360万円までは新NISA口座で、超えた分は特定口座で買います。インデックス投資信託なら、超えた分を現金のまま何年も置いておくことはしません。もともとリスク資産だったお金を、リスク資産に戻すだけだからです。
高配当の個別株は、買う時期を待つあいだ現金で持ちます。タイミングを見て買うからです。同じ現金でも、目的なく寝かせている現金と、買うための待機資金は別のものだと考えています。
買い方は口座で変わりません。インデックス投資信託は一括で入れます。タイミングを見て買うのは、高配当の個別株のほうだけです。これは新NISA口座でも特定口座でも同じです。
ステップ4|翌年以降に買い直すのは、インデックス投資信託だけ
翌年になると、新NISAの枠がまた360万円分空きます。そこで特定口座の分を買い直すかどうか。ここも商品で分かれます。
インデックス投資信託は買い直します。特定口座の分を枠の範囲で売り、新NISA口座で買い直します。売って買い直しても値動きの性質が変わらないので、実害が小さいからです。
高配当の個別株は買い直しません。新NISA口座で買った分も、特定口座で買った分もです。買った値段で利回りが決まるので、売ってしまうとその利回りを手放すことになります。同じ銘柄を買い戻せたとしても、そのときの株価が上がっていれば、利回りは下がります。
なお買い直すときは特定口座での売却になるので、含み益があれば20.315%の税がかかります。それでも移すのは、その後の値上がりと分配金が非課税になるからです。持ち続ける期間が長いほど、この差は大きくなります。枠を埋めた後の考え方は新NISAを埋め切ったあと、どこに入れる?に書きました。
退会できないと言われたら
ここまで読んで、そもそも退会できるのかと気になった方もいると思います。持株会の規約は会社ごとに違います。
退会の理由を書いて申請し、持株会の承認を得てはじめて退会できるという運用もあります。「原則、退職時以外は退会できない」と説明される会社も実在します。
まず規約を読んでください。そのうえで、判断できない部分は持株会の事務局に確認します。ここは想像で動いても仕方がないところです。手続きの全体像は持株会のやめ方|退会・引き出し・売却の手続きにまとめました。
ここで、根拠になる文書をひとつ紹介します。日本証券業協会の「持株制度に関するガイドライン」です。持株会の規約は、各社がこれをもとに作っています。そこにはこう書かれています ( 出典:日本証券業協会 持株制度に関するガイドライン ) 。
会員は、理事長に申し出ることにより、何時でも退会することができるものとする。
日本証券業協会「持株制度に関するガイドライン」第2章15.退会
ガイドライン上は、いつでも退会できるのが原則です。ただし実際に適用されるのは自社の規約です。「退会できない」と言われたら、規約のどこにそう書いてあるのかを確認してください。
なお同じガイドラインには、退会せずに拠出を休止する仕組みもあります。ただし条件は「事故・病気等やむを得ない事情がある場合で、かつ再開の見込みがある場合」です。リスクを減らしたいという理由では使えません。止めたいなら、休止ではなく退会を検討することになります。
非上場会社の持株会は、前提が変わります
持株会は上場会社だけの制度ではありません。同じガイドラインは、非上場株式を取得対象とする持株会についても定めています。お勤め先が上場していなくても、持株会がある会社はあります。
ただしここから先の話は、上場株式が前提です。非上場株式の持株会では、ガイドライン上、会員名義への書き換えを制限したり、持分を持株会が買い取る形にしたりすることが規約で定められます。市場で売れないので、換金できるのは退職時など限られた場面だけ、という運用が一般的です。
この場合、「売って新NISAで買い直す」という選択肢がそもそも取れないことがあります。まず規約で、退会時に現金で戻るのか、いつ戻るのかを確認してください。
売る前に確認すること
売却の前に、3つだけ確認してください。
1つ目はインサイダー取引規制です。持株会の「積立」は適用除外ですが、引き出した株の「売却」は規制の対象です。未公表の重要事実を知り得る立場なら、確認が必要です。詳しくは持株会の株を売るとインサイダー取引になる?に書きました。
2つ目は単元です。持株会の株は、単元に達するまで引き出せません。株数が足りなければ、そこまで待つか、退会して精算することになります。
3つ目は引き出し先です。会社が契約している事務委託先の証券会社にある、自分名義の口座に指定されているのが原則です。ネット証券へ直接移すことはできません。
筆者はどうしたか
筆者は持株会を退会し、全株を売却しました。引き出し先は、やはり指定された証券会社でした。そこで売却して現金にし、あらためて自分の口座へ移しました。
いまは日本の高配当株を約90銘柄に分散しています。1銘柄あたりは約1%です。自社株1社に寄せていたときと比べると、1社の業績で資産が動く幅はずいぶん小さくなりました。
やってみて分かったのは、売ること自体は難しくないということです。難しいのは、その次に何を買うかを決めることでした。だからこの記事では、手続きよりも目的の決め方に紙面を割いています。
まとめ|移せないから、考え直せます
もう一度、結論です。持株会の株は新NISAへ移せません。売って、買い直します。
- 移管はできない:引き出した後でも移せない。売却→買い直しの3手順
- 売れば税金がかかる:売却益の20.315%。申告分離課税なので給与とは合算されない
- 売るのは一度:分けるのは買う場所。年360万円まではNISA口座、超えた分は特定口座
- 先に目的を決め直す:ライフプランがなければ、置き場所も決まらない
- 買い方は商品で決まる:インデックスは待たずに一括。タイミングを見るのは高配当株だけ
- 買い直すのはインデックスだけ:高配当の個別株は、どちらの口座でも買い直さない
移せないのは不便に見えますが、いったん現金に戻るということは、置き場所をゼロから考え直せるということです。持株会に入っていたあいだは、会社が決めてくれていました。これからは自分で決められます。
そもそも入るべきかどうかから考えたい方は持株会と新NISA、どっちを優先?もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. 持株会の株を新NISAに移せますか?
移せません。新NISAで非課税になるのは、NISA口座で新しく買い付けた分だけです。持株会から引き出した後の株も移せません。売って、あらためて買い直すことになります。
Q2. 売ると税金はいくらかかりますか?
売却益の20.315%です。上場株式の売却益は申告分離課税で、税率は金額によらず一定です。給与とは合算されないので、売る年を分けても合計は変わりません。なお売却益が増えるとふるさと納税の上限額は上がります。
Q3. 1,000万円あります。全額がNISAに入るまで何年かかりますか?
インデックス投資信託なら3年です。新NISAは年間360万円が上限だからです。そのあいだ残りは現金ではなく、特定口座で同じものを買っておきます。高配当の個別株を選ぶなら、買い直さないので年数の話は出てきません。なお東証の調査では加入者1人当たりの平均保有金額は250.3万円なので、多くの方は売った年のうちに全額が入ります。
Q4. 売った年は確定申告が必要ですか?
特定口座 (源泉徴収あり) なら、原則として不要です。証券会社が源泉徴収してくれます。損失が出て翌年以降に繰り越したい場合などは、申告したほうが有利になることがあります。詳しくは持株会の税金と確定申告をご覧ください。
Q5. 退会を認めてもらえません
規約は会社ごとに違います。まず規約を読み、事務局に確認してください。「原則、退職時以外は退会できない」という運用もあります。すぐに退会できなくても、拠出を止められる会社はあります。
Q6. 売ったお金を全部NISAに入れられません。残りはどうしますか?
特定口座で、新NISAで買う予定と同じものを買っておきます。インデックス投資信託なら、現金で何年も寝かせる必要はありません。高配当の個別株なら、買う時期を待つあいだは待機資金として現金で持ちます。翌年以降にNISAへ移し替えるかどうかは商品で分かれ、インデックス投信は移し替え、高配当個別株は移し替えないというのが筆者の考え方です。
この記事は筆者個人の経験と考え方をまとめたものであり、特定の銘柄や商品を勧めるものではありません。税率・制度は2026年9月時点のものです。持株会の規約や引き出し先は会社ごとに異なります。最新の情報と個別の取扱いは、勤務先の持株会事務局および各公式サイトでご確認ください。


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